未来生物 ドメスティック・ラーヴァ | LEGEND OF FUTURE

LEGEND OF FUTURE

動物好きな自称よろず創作家・TechpanCreateによる、思弁的進化をテーマにしたブログ。

Domestic Larva

ドメスティック・ラーヴァ
分類*節足動物門 昆虫網 甲虫目 カンケツセンチュウ科
棲息時代*2億年後
大きさ*全長30~45cm

棲息地域*北部砂漠地帯
概要*

飛翔力を失い、地上での生活に適応した肉食性の甲虫。南部森林地帯に広く棲息するゲイザー・ウォーム(その項参照の事)に近縁。羽は全く退化しており、芋虫状の体には外皮がはちきれる程の体液が詰まって非常にぶよぶよしている。オスの存在しない単為生殖(メスだけで繁殖する能力を持つ事)で、特定の産卵期を持たず、24時間いつでも産卵が可能だ。

彼等の分布は、砂漠のオアシスに巨大なコロニーを構えるアリクワガタ(その項参照の事)の分布と一致し、それ以外の場所では見る事は出来ない。何故なら彼等はアリクワガタの巨大な巣の中、それもアリクワガタが仲間の屍骸を廃棄する「ゴミ捨て場」にしか棲息せず、アリクワガタが提供する餌…仲間の屍骸だけを食べて生きる動物だからである。

アリクワガタは数億匹からなる群れで生活し、巣の周囲の藻類や菌類を採取したり、広大な巣の中に侵入する他種の虫を殺して食料にする。群れの規模が大きい故に毎日出される糞や仲間の屍骸などの「廃棄物」は膨大な量になり、それを狙って死肉食性の虫が多く集まってくる。アリクワガタは相手の大きさ、危険度に応じ、ある者は群れで撃退し、ある者は殺してその肉を食べる。ドメスティック・ラーヴァは後者の典型であり、長年の進化の結果、アリクワガタの屍骸のみを食べる道を選んだ。

アリクワガタの外殻は非常に分厚いクチクラ層で覆われており、巨大サイズの捕食者なら兎も角、同等のサイズの動物には手に余る代物である(アリクワガタ自身ですら噛み裂く事が出来ない。これは共食いを防ぐ効果があるようだ)。然し、ドメスティック・ラーヴァは特殊な消化酵素でこれを処理する事が可能であり、結果、アリクワガタが毎日専用の「ゴミ捨て場」に廃棄する仲間の屍骸を独占して食べる事が出来る。

栄養を多量に摂取した彼等は毎日タマゴを産み、爆発的な勢いで数を増やす。然し、それがアリクワガタの個体数を圧迫する事は絶対に起こらない。アリクワガタは時には彼等が産み落としたタマゴを、ある時はタマゴから孵ったばかりの幼虫を、ある時は十分成長したサナギを、時には丸々と太って身動きもままならなくなった成虫を襲い、殺して食料にしてしまうからである。その際、アリクワガタは群れの全てを殺す事をせず、必ず数匹は生かして残しておく。此処まで来ると、共存と言うよりはアリクワガタがドメスティック・ラーヴァを家畜同然に扱っているようにすら見える。奇妙な共存関係と言わざるを得ない。若しアリクワガタのコロニーに壊滅的なダメージが与えられ、コロニーの維持が不可能になると、多くのドメスティック・ラーヴァも共倒れになる。

また、コロニーが分家される際には、幾つかのドメスティック・ラーヴァのタマゴも、分家したアリクワガタの群れと共に外部に持ち出される。持ち出されたタマゴは新しいコロニーで孵化し、其処で新たな屍骸処理の役目を担う事になるのだ。