アリクワガタ(ミュルメコルカーヌス・アプテラ)
分類*節足動物門 昆虫網 甲虫目 アリクワガタ科
棲息時代*2億年後
大きさ*女王クワガタ・全長30cm
兵隊クワガタ・全長15cm
働きクワガタ・全長5~8㎝
棲息地域*北部砂漠地帯
概要*
鬱蒼と緑が繁茂する南部森林地帯とは対照的に、現在の北半球のなれの果てである広大な砂漠「北部砂漠地帯」には海からの風が常に吹きすさんで非常に荒涼とした環境になっている。海風の孕んだ湿気が時折霧となる他は雨らしきモノは降り注がず、遮蔽物の無い砂地には強い日光が絶え間なく照り輝いて乾燥させる。こんな地域に安住できる生物は非常に限られており、クチクラ層で体を包み、乾燥に比較的強い昆虫が北部砂漠地帯の主人公である。
この時代、特に隆盛を極めているのはコガネムシやオサムシ等の甲虫類である。彼等は嘗て他種の昆虫が占めていた様々な生態的地位に潜り込み、多様な形態になって世界各地で生きている。
アリクワガタは北部砂漠地帯を代表する未来の甲虫類である。集団生活を送る性質から、又の名を「ゲシュタルト・ビートル」とも言う。
彼等は進化の果てに、アリやシロアリ等の社会性昆虫に似た適応を示した。砂漠のそちこちにあるオアシスに砂と特殊な分泌物を混ぜた素材で巨大な岩のような巣を作り、数億匹の個体からなる大きな群れで生活する。
群れは1~2匹の女王クワガタ(繁殖を専門に受け持つメス)、数千匹の兵隊クワガタ(オスのみで形成されるカスト)、そして億単位の個体数の働きクワガタ(繁殖能力の無いメスによって形成されるカスト)によって形成される。
女王クワガタは休む事無く毎日タマゴを産みつづけ、働きクワガタがそれを世話する。兵隊クワガタは外敵からコロニーを守護する。外部から餌を集める時は働きクワガタが大群で出かけ、兵隊クワガタがそれを護衛する。
地上で生活する為に飛ぶ必要が無くなり、その為羽はすっかり退化。オス、メスとも発達した大顎を持ち、攻撃専門のオス(兵隊クワガタ)では特に発達し、鋭い棘が生えて武器として役立つ。働きクワガタでは運搬等の作業に使われる為、先端の丸いピンセット状になっている。
雑食性で何でも食べるが、特に菌類の汁を好み、オアシスに巣を設けるのも藻類を手っ取り早く集めるのが第一の目的。外部から採取するだけに留まらず、巣の内部にあるゴミ捨て場(仲間の屍骸、糞、孵化しなかった卵などを捨てる)に繁茂する特殊なキノコを食べる事も。動物性蛋白質としては、ゴミ捨て場に集まる屍肉食性の甲虫を主に獲物としており、外に出て狩る事は少ない。幾つかの種類の肉食性・雑食性甲虫にはアリクワガタのゴミ捨て場を主に生活場所とし、其処で繁殖するものさえある。これらはタマゴの状態で食料にされる事もあれば、孵化して成虫になるまで捨て置かれ、存分に成長したところで兵隊クワガタが襲い、殺して食べ物にする事もある。初歩的な「家畜」と言って良いかも知れない。